パン製造に当たって必要な添加物のうち、イーストフードと乳化剤は、これまでほぼ必須と言われてきました。
それが一部のパンでは、「イーストフードと乳化剤、不使用」と謳われています。これは一体どういうことなのか。
今回は、イーストフードとは何か?体に良いのか?不使用の食パンとは一体何か?について解説します。
イーストフードとは?
イーストフードというのは、食品添加物の一つで、パンをふっくらと焼き上げるためのものです。
普通、パンを上手く焼き上げるには、手作りによって職人の熟練した知識や技術が必要です。イーストフードや乳化剤を使わず、パンが作られています。
しかし、このイーストフードをイーストにまぜると機械を使ってもパンをふっくらと焼き上げることができるようになります。
イーストフードとは、イースト菌(パン酵母)の栄養源です。
イーストフードの種類
イーストフードとは、特定の添加物を指すのではなく、イースト菌を活発にする添加物の一括名称です。
実際にイーストフードとして使われているものは、下のようなものがあります。
塩化アンモニウム
塩化マグネシウム
炭酸アンモニウム
炭酸カリウム
炭酸カルシウム
硫酸アンモニウム
硫酸Ca
硫酸マグネシウム
リン酸Ca
リン酸水素ニアンモニウム
リン酸二水素アンモニウム
リン酸一水素カルシウム
リン酸二水素カルシウム
グルコン酸K
グルコン酸Na
焼成カルシウム
イーストフードは、一括表示できる
一般的に16種類の上の添加物から4〜5種類ピックアップされて、使われて、「イーストフード」と記載されています。
イーストフードは一括表示できるので、どの物質を使ったのか?は記載せずに、ひとこと「イーストフード」と記載するだけです。
ですので、上の添加物などから一種類しか使っていない場合は、「イーストフード」と記載できないようです。
逆に言うと、「イーストフード」と記載されている場合は、そのパンには2種類の添加物が入っているということになります。
一括表示のデメリット
一括表示は、細かな物質名を記載しなくていいというメリットと引き換えに、消費者にとっては細かな物質が分からないというデメリットがあります。
つまり、ほかの目的で使った物質があっても記載されることはないというデメリットがあります。
たとえば、保存料。
保存料としてイーストフードの物質が使われていても、ひとまとめにしてイーストフードのみ記載されて終わりです。
そうすると、原材料名に保存料の文字はなくなります。
イーストフードを使うメリット
イーストフードを使うメリットを、パンメーカー側から考えてみます。
機械生産しやすいように
機械生産によってダメージを受ける生地でも、ふっくらとしたパンが焼けるようになります。
パンを手作りで、日持ちしなくて良いのなら、イーストフードは必要ありません。昔のパンはイーストフードなしで作っていました。
大手パンメーカーの場合は、機械生産がメインですので、やっぱり生地が衝撃を受けます。そのため、イーストフードの力を借りるというわけです。
パンの老化防止のため
2つ目は、パンの老化防止があります。大手パンメーカーで売られているパンは、賞味期限を長く設定するために、老化防止策がとられています。
逆に、昔ながらの手作りで作ったパンは、日持ちが短く、なるべく早く食べてもらうのが基本となっています。それらはイーストフードが使われていないことがあります。作りたてをそのまま売る場合、原材料の表示がないので、使っているか使ってないか分からないですが。
昔は、イーストフードを使わないで作るのが当たり前でした。
昔のパンはすべて、当日は、ふわふわですが、翌日以降は固くなっていく。それが、パンの常識です。イーストフードを使うと、数日間たっても、やわらかく食べられるようになります。
イーストフードは体に悪いのか?
イーストフードは健康に害があるのでしょうか。
上の複数の物質のなかには、有害性が疑われている物質があります。そのためイーストフードも有害ではないかという疑念があります。
そもそもイーストフードという物質は存在しません。上に書かれた複数の添加物をまとめて記載するときの総称です。
さらに、イーストフードとまとめて記載されるので、何が使われているのか分からないという疑念から、やっぱり体に良くないのでは?と言う考えが広まったのではないかと思います。
一括表示が怪しさを出す原因
イーストフードは、複数の物質をまとめた総称です。イーストフードと書いておけば、物質名を原材料表示に載せなくても良くなります。
そのため、上に書いた物質の中から、何を入れていても、イーストフードと書くだけです。
一括表示はよくある話
一括表示を使っているのは、パン製造で使うイーストフードだけなのか?
実はそうではありません。厚生労働省によると、14種類あります。
イーストフード、ガムベース、かんすい、苦味料、酵素、光沢剤、香料、酸味料、チューインガム軟化剤、調味料、豆腐用凝固剤、乳化剤、pH調整剤、膨張剤
上に該当する場合には、物質名の代わりに一括名を記載するだけでOKだそうです。
有害性は量によるという見解
イーストフードは、有害性が疑われている複数の物質を使用することができます。
しかし、体に害がある場合は、疑われる物質を大量に食べた場合のことです。パンに使われる物質量は、国の規定していまして、使用量はごくわずかです。
大量に摂ると何でも毒になる
食品添加物の安全は量で決まると言われています。塩も大量に摂取すると体に毒です。であるから、塩は体に悪いか?と言うとそうでもありません。
安全な量は、さまざまな実験をベースに規定されています。
イーストフード不使用のパンが人気
今、パン業界では、「イーストフード・乳化剤は使っていません」と言う強調表示が記載されたパンが流行っています。
イーストフードや乳化剤は、体に悪いというイメージがあるので、使用しないでパンを作っていますよという謳い文句ですね。
中には、「イーストフードや乳化剤、無添加」と記載されている商品もあって、ちょっと誤解を招きそうな書き方です。
あと、イーストフードや乳化剤を使用していないパンであっても、同じ成分で同じ機能を持った代わりの物質を使っているので、結果的に同じです。
つまり成分が同じなので、同じ味になるのではないかという感じです。
臭素酸カリウムは使用禁止?
「イーストフード」という一括表示のほかに、臭素酸カリウムを使ってはダメという規制が、パンには、あります。
臭素酸カリウムは、アメリカでは使用が認められていますが、EUや中国では使用禁止となっていて、日本でもパン製造のみに小麦粉改良剤として使用が認められているものです。
ですが、しばらく臭素酸カリウムは使われていませんでした。それが、ふたたび使われるようになっています。
パン製造に使用した臭素酸カリウムは、完成品に残存させないことで使用が認められています。つまり、完成品の手前で分解もしくは除去しなければならないとされています。
まとめ
今回は、イーストフードとは何か?体に良いのか?不使用の食パンとは一体何か?について解説しました。
イーストフードを使用したパンも、使用していないパンも、さらに美味しいパンを目指しています。
臭素酸カリウムも同じく、より美味しくするために、健康に害がない程度の量で、しかも完成品には残らない状態であるべきと規制されて使用が認められています。
もっと美味しいパンを探していきたいと思います。